私は東京都東村山市で生まれ、中学1年生のときに埼玉県所沢市に引っ越し、大学を卒業してからは高田馬場・池袋周辺に暮らすという、なんとも微妙としか言いようのない生涯を過ごしてきた。
実家はいまも所沢にある。好きなプロ野球チームは西武ライオンズだ。
だからこそ『翔んで埼玉』は避けて通れない作品だった。
この作品は、埼玉県と東京都の間に関所ができて、埼玉県民は通行手形がないと都内に入れず、もちろん都内ではさまざまな差別と迫害の対象になっているというブッ飛んでいるようでややリアルなストーリーで、埼玉県民および出身者はみな「悔しいがそのとおりだ!」という感想を持つことになる異色作です。
(予告編だけでも見ていって)
ちなみに作者はパタリロで有名な魔夜峰央さんで、この作品を描いていたときは所沢市に住んでいたそうです。まさに聖地、所沢。
そんなわけで、作中であれば東京都との関所が設置されていたであろう所沢の地で、この問題作の映画版をなんとしても観たかったのです。
しかし所沢駅前の西武デパート(通称:ワルツ所沢)の8階にあった映画館は数年前に潰れており、所沢で映画を観るなら新所沢パルコの「新所沢レッツシネパーク」に行くことになります。
そしていま新たな聖地となった新所沢パルコは、全館を挙げて「翔んで埼玉」をプッシュしています。


パルコのなかにあるパルコブックセンターでは漫画版「翔んで埼玉」が平積み。

主役のGACKTがポスターにサインを残していったようだ。

さて映画館に行ってみると、
ドーン!!!!!!

一緒に来てみるか? 所沢へ――。
埼玉県人にはそこらへんの草でも食わせておけ!
東京都民のパルコが新所沢にあるわけないだろ!

映画がはじまる前からすでに埼玉disの嵐。
そしてどの回も満席…。すごい人気だ。

だが俺は持っている、予約券を。

新所沢パルコの映画館できっちりWeb予約したのは初めてだ。
*****
ポッドキャストでも感想を話したが、映画の中身は想像以上に苛烈極まるものだった。
これでもかと目にも止まらぬスピードで繰り出されてくる所沢および埼玉ディスにグサグサと刺されるが、幸いなことにそもそも自覚症状があるだけにダメージは少ない。
それは他のお客さんも同じのようで、きついディスりを食らうたびに館内にどっと笑いが起きる。これが埼玉県民のハートの強さか。
しかもエンドロールが終わった後には会場から拍手の嵐。笑いながら立ち上がって拍手を送る人もいた。
終わったあとに拍手が起きる映画を初めてみた。
なんだかんだ郷土愛があるのだろう。それは少々きついことを言われたくらいじゃ変わらないもので、大人になってくるとより深まるもの。
むしろ笑ってくれたらそれはそれで嬉しいし、何なら話題になるだけで十分だ。そのプライドのなさが埼玉県にいっときでも関わった者たちに共通するマインドだ。
地域ネタって、ああだこうだ言い合えるのがやっぱり楽しい。埼玉県民、元県民の方は県内の映画館までぜひ観に行ってみてください。所沢のように東京都との境目くらいにある映画館がおすすめです。
気づいたら、次は大宮で観てみようか、いや流山もいいな、なんて思っている自分がいた。
*****
東京で生まれて、思春期の頃に所沢に引っ越した。
誇り高き都民としてのプライドのようなものを抱え、懊悩しながら埼玉に住んできたが、そんな自分からようやく開放された気分だ。考えてみたら東村山よりも所沢のほうがよっぽど便利だった。
映画館を出たとき、やっと心から埼玉を愛せた気がした。
--次回予告

「まあ映画の中で一番扱いがひどかったのは群馬なんだが…」
この話題はポッドキャストでも深掘りしていくよ。
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