読書家の友人が「お願いだから読んで!」とまで言ってくるのでとりあえず全巻読んでみたら、これがめちゃくちゃ面白かった。
いわゆる幕末・明治維新モノのマンガだが、この時代はどうも意識高めな感じの作品が多くてお腹いっぱいだった。でも風雲児たちはとにかくいい意味で泥臭い。幕末を描くためにあえて関ヶ原から話を始める徹底っぷりと、すごく地味な人たちに焦点を当て、丁寧に描いているところが素晴らしい。
物語的にはもっとおいしい登場人物たちがいるはずなのに、初めて見たり、聞いたりした人がわんさか出てきて、みんながいぶし銀な見せ場を披露してくる。
日本史の教科書では地味な印象のある前野良沢とか田沼意次あたりはこのマンガで言えば大スター。もっともっと地味な蘭学者や医者、地方の藩で絵画を勉強する人とか、伊勢沖で漂流してロシアまで行っちゃった一般人とかを生き生きと描いていて、ページをめくるのが止まらない。
なぜなら脇役として登場した人が気づいたら主役になっていたりするから油断できないのだ。
ただ、全編通してどぎつい昭和ギャグが盛り込まれていて、とにかくうるさく、話がなかなか進まない。正直、1巻の「関ヶ原の合戦」の時点で乱れ飛ぶギャグに心が折れそうになったけど、5巻を過ぎるころからそれも癖になるから不思議だ。
表紙こそこんな劇画タッチの絵になっているが、中身は完全なギャグ漫画のタッチである。だけどそれでも5巻までは我慢して読み進めてほしい。
第一部の無印「風雲児たち」全20巻は関ヶ原の戦いから江戸幕府の政治・経済・文化をあり得ないくらい細やかに描く。途中、ロシアに漂流した一般人たちや、日本に漂流したロシア人の冒険もやたら詳細に描かれるが、そっちはそっちでクソ面白くてやばい。
そしてようやく第二部で幕末に入る。できれば第一部から読み進めてほしい。
高校生のスタンダードとされている「山川の日本史」に飽きた受験生は、この風雲児たちの「第一部」と「幕末編」も読んだほうがいいと思う。このマンガは下手すると、山川出版の日本史B用語集で「頻度1」(十数冊ある日本史の教科書のうち何冊に出たかを表す数値。頻度1なら1冊しか登場しないレア単語という意味)の言葉までもカバーしてるかもしれない。
中国史ならキングダムや横山光輝・三国志、蒼天航路。ヨーロッパ史ならヒストリエ、チェーザレあたりが好きだけど、日本史だと風雲児たちが一番かも。
繰り返すけど、平成生まれの人には1ページに10個くらい散りばめれれている昭和ギャグが気になって頭に入ってこないかもしれない。昭和55年生まれの自分でさえ、最初はなかなかきつかった(連載開始は昭和54年)。
だが最後はそれも気にならなくなるくらいストーリーが面白い。
史実って最高だ。
--次回予告

「風雲児たちで一番好きな登場人物は田沼意次です」
この話題はポッドキャストでも深掘りしていくよ。
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