いい本だった。とても役に立つ教訓が短いストーリーの中にぎゅっと詰まっている。
著者の吉永龍樹さんことヨシナガさんはブログ「僕の見た秩序」を運営、サラリーマンでありながら何冊か本も出し、最近ではLINEスタンプ「ゆかいなエヅプトくん」が大ヒット中で、“何をやってもうまくいく人”というイメージ。
なんですが、この本の主人公はヨシナガさんではなく、彼の部下として配属されてきた女性社員という設定。
上司のヨシナガさんと彼女のやり取りを通して、さまざまなヒットコンテンツを作る上でどんなことを考えるべきかが、ライトな物語の中にさりげなく語られる。わかりやすすぎるストーリーなので、めちゃくちゃ読みやすい。
◆◆◆
主人公の女の子は会社の仕事に興味がなく、いつ辞めてもいいと思いつつ、なんとなく業務をこなしていた。ある日、異動でウェブの記事を書く仕事をすることになり、小さな部署へ。そのチームは上司のヨシナガさん、ただ1人だけ。
なぜか初日のランチで「あなたの夢はなんですか?」「人生の目標はなんですか?」と聞かれて、主人公は戸惑う。ヨシナガさんはしっかりと変人に描かれている。
でも主人公に対するそういう問いかけや、ふとしたアドバイスがけっこうすごいな、ああ心が痛い、確かにその通りだ、本当に普段からこんなこと考えてるんだろうなと、徐々に思えてくる。
「必死に考える、努力する」
上司のヨシナガさんが主人公の女の子にこんなことを言っていた。
「僕は目立った才能がないので、すごい人と勝負するには、努力で補うしかないんです」
ええー、ヨシナガさんがそんなこと言うの? 十分に才能溢れるクリエイターじゃないか、と思った。でもそれに対して女の子が誓った以下のセリフもヨシナガさんが生み出したものである。
「私だって、文章が特に上手いわけではない。〜中略〜 みんなが求めているものが何か、必死に考える。そして、どうしたら面白いと思ってもらえるか、新しい切り口にできないか、できるだけ工夫する」
たぶん誰もが人に求められる仕事をするために必死に考えて、工夫して最後までこだわってアウトプットする。その繰り返しであって、ヨシナガさんもずっとそれをとても大事にしているということだと思う。
「時間が足りないから、スーツ以外の服は全部捨てた」
で、さらに面白かったのがこの部分。女の子がこう言う。
「私、ここのところ、すごく寝不足で、毎日もっと時間があればなって思います」
それに対するヨシナガさん。
「僕も昔からずっと、時間が足りないって思ってます。時間を捻出するために、とにかく努力しましたよ。例えば、スーツ以外の服を全部捨てたり」
「人間は、1日のうちにそんなにたくさんの“選択”や“決断”をできないらしいんです。だから、服を選んだり、昼食に入る店を選んだりすることをやめれば、その分、自分の作品作りに力を使うことができるんじゃないかな……と」
ああ、そういえばこの話、去年本人から聞いて大笑いしたな、と思い出した。本当に毎日スーツを着ているし、何かのスポーツをするときもスーツだと聞いた。
もちろん「変態だなぁ」とか思ってたんだけど、でも本気でそんなことをやって、それによってもの凄い結果を残しているわけで、笑ってる場合じゃないなといまさら思った。
自分にここまでの努力ができているかといえばまったく全然ダメだ。服はたくさん持ってるし、靴も多い。はてなTシャツだけで十数枚ある。
まとめ
自分の作ったコンテンツを世の中に広げたいと本気で考えている人が持つ覚悟の大きさとか、すごい人がコツコツ努力をしたら半端じゃない、ということがわかる本だった。同時に、凡人なんだからもっとストイックにならなければと反省もする本だった。ヨシナガさんとは年に1回、毎年7月に飲むんだけど、今年はどんな変態エピソードを聞かされても、あまり笑えない気がする。
1時間もかからずに読み終わるのに、すっごい考えこんでしまい、繰り返し読んじゃう謎の本です。コンテンツ(テキストでも絵でも音楽でもYouTuberでもなんでも)を作る人にはとてもおすすめです。
ちなみにこの本の編集担当である、男版吉田沙保里のようなツラをした日経BP社の編集者・竹内靖朗氏は、僕のおでん本も担当してくれた人です。
--次回予告

「ヨシナガ vs ナルミによる全裸対談はまもなくです」
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