ビル・ゲイツ氏が毎年恒例の「今年読んでよかった本」をリストアップしていました。2014年は主に経済およびビジネス書にフォーカスした年だったそうです。
彼が「最高のビジネス書」と呼ぶ5冊を、自身のブログで「The Best Books I Read in 2014」と題して紹介しています。
「今年読んで良かった」とはいっても、全部が今年刊行の本ではありませんが、日本でかなり売れた本も入っています。この機会に読んでみてはいかがでしょうか。
◆ゲイツが20年来ドはまりしてる「Business Adventures」
John Brooks
Open Road Media
2014-07-08
この「Business Adventures」はゲイツが20年以上前に、ウォーレン・バフェットからもらった本。1950年代から1960年代のNew Yorkerのビジネス特集記事を集めた本ですが、いまでも読み返すことがある愛読書だそうです。
著者であるジョン・ブルックス氏のビジネスに対する洞察は、「現在のビジネスに通じる部分が多々あり、素晴らしいものである」とゲイツ氏は絶賛しています。特に気に入っているのは「ゼロックス」の項目で、これは以下のリンクから無料でダウンロードできます。とても面白かったので、読んでみてはどうでしょう。
Here’s a Chapter From My Favorite Business Book | Bill Gates
嬉しいことに「Business Adventures」は日本語訳版も出ていますよ。
◆大ベストセラー「21世紀の資本」
2014年に出版されたビジネス書のなかで最も有名なのが「21世紀の資本」でしょう。ぼくもようやく読み終えたところでした。詳細なデータと理論で、所得格差と経済成長などの格差問題に新しい理解を与えてくれる良書です。
ゲイツ氏は同書の中で述べられているピケティの考察について、「一部の政策的処方などには懸念があるが、最も重要な結論部分については大いに賛同できる」と述べ、「彼の研究が、賢い人たちを富と所得格差の研究に惹きつけることを望む」ともコメント。
格差が大嫌いなゲイツ氏、超おすすめしていますね。かなりボリュームがあるので、日本語訳の方で読みました。
◆「How Asia Works」で中国について考える
ゲイツ氏は、この本の著者であるジョー・スタッドウェル氏について、「開発経済学における2つの重大な問題に対する答えを生み出した」と評価しています。その2つの問題とは、「日本や台湾、韓国、中国といった国や地域はいかに高度な成長を遂げてきたのか?」と、「なぜこれらの国々はそのような成長を成し遂げられたのか?」というものです。
Joe Studwell
Grove Press
2013-07-02
「How Asia Works」ではこの2つの問いに対して、輸出に焦点を当てて過剰農産物から収入を得られるような生産基礎を築き、政府が金融機関を精密にコントロールすることで、この両方の分野を育成することにより達成されたと説明しています。
ゲイツ氏は「特に農業に関する項目の洞察は素晴らしい」としており、ビルゲイツ財団の農業チーム全体から得られるものと同じくらいの量の考察材料が得られた、と最大限の賛辞を与えています。
残念ながら日本語訳はなし。同じ著者の「チャイナ・ドリーム」も良さそう。
◆人間関係について深く考えこんだ小説「The Rosie Effect」
ビジネス書縛りと思いきや、こちらは実は小説。ゲイツ氏は「The Rosie Effectはこれまで読んだ小説の中でも特に陽気で、続きが気になるものだった」と言っています。
面白おかしい小説でありながら、人間関係について深く考えさせらる作品になっており、「人間関係を維持するためにどれくらいの時間や労力を注ぎ込むべきなのかと深く考えさせられた」とのことです。
日本語訳はないですが、さくっと読めそうな小説です。ハードカバー派の人はこちらから。
◆人間はもっと少ない「材料」でモノを生み出せる…?
バーツラフ・スミル氏の著書「Making the Modern World」は、シリコンや木、プラスチック、セメントなどのあらゆる材料に関する見解が書かれた異色の本。ゲイツ氏は「もしも誰かが『材料が少ない』と言っていたら、この本を送ってあげてください」と述べています。
もともと著者のスミル氏は「なぜこうも多くの材料を使ってさまざまなものを作るのか?」と疑問に思っていたそうです。そこで「人間は現在よりも少量の材料でも物を作り出す能力がある」ということを著書の中で多くのデータを使って証明しました。
例えば、ソーダ缶はもっと少量のアルミニウムでも十分に作れるといったことを、事例を交えて証明することで材料の無駄遣いを指摘しています。
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以上、今年もビル・ゲイツらしい硬派で意識の高いセレクト。もう年末年始ですし、ゆっくりと英語の本を読んでみるのもいいかと思います。読んだことがなかった後半の3冊をポチってみました。