文章なんて誰でも書けるんだけど、それでも人によって習熟度はだいぶばらつきがある。同じ日本語なのに読みやすいものもあれば、読みにくいものもある。リズムが良い文章は長くてもあっという間に読み終わるし、逆は悲惨だ。

で、ウェブ時代の文章術というのがあるとすれば、それはブロガーに学んでみると面白いんじゃないか、みたいなイベントがあったので参加してきた。

テーマは「ウェブの文章に影響を与え続ける第一人者たちによる文章技術論」。ゲストは「やまもといちろうBLOG」のやまもといちろう氏と、「小鳥ピヨピヨ」の清田いちる氏。

この2人の文章技術・文章作法はまったく対照的で面白かった。ここまで考えてブログ書いてるの!?って驚いた。そのへんをライブドアブログの事業責任者・佐々木大輔氏と、日経BPの編集者・竹内靖朗氏がいろいろ聞き出していた。

もう1カ月以上前のことですが、メモの内容を記してみます。以下のような感じのイベントでした。

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 左から佐々木さん、竹内さん、いちるさん、やまもとさん

ちなみにこの記事の続きはこちら。

中編:「切込隊長が、やまもといちろうになるまで」--ウェブ時代の文章読本より
http://narumi.blog.jp/archives/2169543.html

後編:ウェブで読める“名文”をたくさん集めた--ウェブ時代の文章読本より

              ◆◆◆

佐々木:文章読本というのは谷崎潤一郎さんのような小説家が最初に書いたんですけれど、ただ現代に、もしそういうものを書く人がいるとすれば、ネットのいろいろなコミュニケーションに精通しておられるブロガーじゃないかと、なんとなく僕は思っています。

なぜ思うかというと、いちるさん、やまもとさんの文章を読んで、そう思うからなんです。

ですから、今日は実際にどんなことを考えて文章を書かれているのか。実際に実例の文章をいっぱい持ってきましたので、「ここはこういうことを考えた」「これはこうなんじゃないか」というお話をお伺いしてみたいなと思います。

今日の構成なんですが、1人ずつのパートを設けまして、名誉なのか、お恥ずかしいのかわからないのですが、過去に書いた文章がバンバン出てきます。それに対して、やいのやいのと言います。

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いちる:恥ずかしくて死にそうです(笑)。

■「小鳥ピヨピヨ」を振り返る

佐々木:(笑)。ちなみに一枚めくっていただくとこの記事。まさにこのイベントのためにですよね?

いちる:そうです。

佐々木:振り返りをしていただきまして、おそらく過去記事をかなり見返されたと思うんですがどうなんですか?

いちる:見返してはないですよ。覚えている範囲のことだけですね。ただ、初稿を15分ぐらいで書いたんですけど、その後、丸1週間かけてこれを直して(笑) これ書くのに1週間かかっているんですね。

佐々木:これは文章力があがったのか?という問いをあげてますけど、あがったんですか?

いちる:ええと、たぶん過去の文章の方が好きな人というのもいると思います。ただ、自分的には螺旋のように、同じところに戻りながらちょっとずつあがっていると信じているという、そのくらいゆるい結論ですね。

佐々木:これ自体が、わりとはてなブックマークがついていると思うんですけど、これで書いた後のまわりの反響とかどうだったんですか?

いちる:何というのか、丸一週間かけて書いたのに104ブクマしかつかないのかという絶望(笑)

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佐々木:この記事の中にかつての名エントリーとか、人気記事とか、試行錯誤されたものが実際に載っていますので、実際にみて解説をいただきたいなと。



いちる:これは3つ目ぐらいに書いたやつですね。はじめてのブログ記事から、最初はこのくらいの長さだったんですよね。Twitterもなかったし、ブログってこんなものかなと思って。

佐々木:ちなみに記事の全文ですよね? 引用ではなくて。

いちる:全文ですね。ちょっとひねったことを書いていい気になっているみたいな(笑) 僕は結構好きなんですけど、そういう感じだと思いますね。

佐々木:これ、今ブログをこういうスタイルで書く人います? スタイルが固まる前の時代ですよね。

いちる:1年くらい前に、数週間こういうスタイルに戻したことがあるんです。そうしたら、メールがいっぱい来て、「こんなのTwitterで書けボケ」みたいな(笑) それで1週間くらいでやめちゃったんですけど。

だから、Twitterがない頃はこんなのあったんじゃないかな。当時、日記サイト、日記エンジンとかティーダイアリーとかいっぱいあって、サルサルとか。そういうのにはこういう記事がいっぱいありましたね。ただ、当時2003年9月ですけど、技術者が書く技術系のブログばっかりだったから、あんまりこういうのはなかったですね。

ブログというものに、テキストサイトのノリを持ち込むというのが当時のコンセプトだったので、こうなったみたいな。



佐々木:数が多いので、ポンポンいきましょうか。これも同じく10年前ですね。この辺はどんな工夫を?

いちる:僕、ここ話し出すと長いんですよ。長いんだけど、「普通誰も知らないような、マニアしかしらないようなネタについて、延々と自分の思いを書くというのがブログっぽいかもしれない」と思って書いてるんです。

ヒップホップ好きが、ブログを読むことって当時ほとんどなかったと思うので、誰も読まないだろうと思っていたら、結構読まれて、こういうのをきっかけで仲良くなった人とかいますね。今日も1人来てますけど。

佐々木:けっこう、いちるさんって日常で感じているものを散文的に書きながら、どんどん増やしていくっていうか、膨らませていって1つのブログにしていくみたいなノリを最初やっていましたよね。

いちる:そうですね。今も基本的には日常の気づきを書くんだけど、書いたら、「いや待って、これはこうじゃないの?」と思ってそれも書いてみたいな感じで、ひとかたまり。

佐々木:一方、これはたぶん日常の気づきの今までのスタイルよりはかなり長い、“ザ・テキストサイト”のノリを、たぶんブログのプラットフォームに1番最初に持ち込んだようなものだと思っているんですけど。

いちる:そうですね。このくらいからですよね。テキストいじりというんですか、文字を大きくしたり、行間空けたり、文字赤くしたりするようにしたのはこの辺からだと思いますね。

やまもと:この辺に、侍魂さんとか、いろいろテキストサイトがガーッと出ていた後期ですかね。

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いちる:もうね、テキストサイトブームは終わっていたと思います。

佐々木:何か、そういうテキストサイト勢から攻撃されたりとかはなかったですか?当時。

いちる:ありましたよ。ありましたけど、テキストサイトの人たちがすでにこう、ブログってテキストサイトと何が違うんだとか、日記と何が違うんだみたいな議論を彼らの内側でやっていたので、僕に直接攻撃が来るというのはちょっとしかなかったですね。

あと、僕としてはそういう人たちを取り込もうと思っていたので、ちょっと変なメールが来たり、コメント欄に書かれたら、すぐさまその人のサイトに行っていろいろ書いて仲良くなったりとかしていました。

やまもと:そっちだったんですか。仲良くなる方?

いちる:仲良くなる方です、僕。

やまもと:砲撃を打ち合う側じゃなくて。

いちる:僕、今日もここに来る前に電車に乗っていて、ちょっとやまもといちろう風のことをブログに書いてみたいなと思って、ちょっと世の中の矛盾をつくみたいな。これってどうなの?とか書くとか、あと砲撃するとか、何回か試すんですけど、やっぱりあんまり向いてないみたいで。

やまもと:そうですか。

いちる:面白くならないんですよ、僕が書くと。

やまもと:そうですかね?

いちる:やっぱり、隊長みたいにできないですね。

やまもと:私それしかしていないですからね。

いちる:まさに、今日はそれを聞きに来たみたいな感じです。

やまもと:(笑) なんで?

いちる:あの、けなす芸すごいなって。



佐々木:これはちょっと長めの記事だと思うんですけど、具体的に使っているテクニックとか、かなり工夫して時間かけたところというのはあるんですか?

いちる:時間かけたのは、やっぱりスネ夫の絵描くところ(笑) まともに描こうとすると、ちゃんと描けないんですよ。これ何回も書き直しましたね。それと今、本当は書き直したくて。画像はもっと大きくあるべきじゃないですか。

佐々木:今だとそうですよね。

いちる:500pxくらいはあるべきだと思うのに、こんなに小さくてクリックしないと見れないようにしたのはちょっと残念だなというのと、あとここで初めてツッコミで色の文字を変えて大きくするというのを使ったと思うんですね。

竹内:このエントリー、はあちゅうがすごい好きだって言ってました。

やまもと:なんてことを言うんですか。

いちる:よりによって(笑) 

竹内:はあちゅうが女子大生の頃に、「僕、いちるさんの知り合いだよ」みたいなことを言ったら、「このエントリー好きだって言ってました」。

やまもと:でも、けっこうこういうエントリー、女性が好きですよね。

いちる:僕のブログの読者は、3年くらい前に調べただけですけど、7割くらい女性で、そういう人向けなのかなと。

やまもと:いいですね。僕のサイトは95%が男性です。

いちる:規模が違います。母数が違う。

やまもと:母数が違うということは、それはより一層男性が読んでるということですよ。

いちる:まあその、いいじゃないですか。

佐々木:これもおそらくスタイルとしては、似たような書き方をされている記事だと思うんですけど、最近こういうのはやろうとは思わないんですか?

いちる:いやいや、やってますよチョイチョイ。

佐々木:この時と、今とで違いというか、この時よりも自分が覚えた技術とか、工夫していることというのはあるんですか?

いちる:今、まともにこういうのをやるのにはちょっと照れがあるんですよ。だから、自分が照れないような感じの、たとえば最近だと「ARuFaの日記」あるじゃないですか。

あれ見ていて、すごくわかるんですよ。僕10年前だったら、あれ書いている。でも今ちょっと恥ずかしくてああ書けない。これもそうで、たぶんこの下の「ほうおうじゃん!」とか言ったりするの、今どこまで自分がやりきれるか自信がないですね。

佐々木:ツッコミがということですか?

いちる:ツッコミをもうちょっと独特な感じで工夫しないと、今はできないかもしれないですね。

■ブログにおける「改行」について

佐々木:こういう風なスタイルでヒットするものを書きたいけど書けないという人に、アドバイスするとしたら何かあるんですか? 大事なのはツッコミとかなんですか?

いちる:自分がAMラジオのパーソナリティになったみたいな気持ちになって、トークしているという。書くというよりも、指でしゃべるみたいな感じで書くとうまくいくかもしれないですね。

あと、これは後で話が出るかもしれませんが、改行したら1行あける。文章書いていると、本とかだと改行して1行あけるとスカスカな感じになっちゃいますけど、ネットで書く時は改行したら1行あけるのが鉄則くらいに思っていた方が、こういう感じになりやすいと思います。

佐々木:やまもとさんのブログは改行で言うと何かこだわっていたりされますか?

やまもと:パラグラフに関しては僕、1文が長くなる悪い癖があるんですよ。これは僕のよくないところでもあるんですけど、なので1つの段落でこれを言おうと思ったら、それ以上のことを言わないように心がけるようになって、読みやすくなったかなと自分では思ってるんですけど。

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佐々木:改行うんぬんよりも、パラグラフで「言うこと」は1つと。

やまもと:あとは今、いちるさんがおっしゃったみたいに段落というかパラグラフ変える時は、1行完全にあけちゃうというのは、読みやすさを担保するものなので、それはなるべく守るというのはやっていますね。

最近スマホ時代になって、改行を勝手にブラウザ側が飛ばしちゃうケースがやっぱりあって、不愉快なので、改行改行とやる仕組みにまたしたりとか。ココログはなんであんな仕様になっちゃったんですかね。

いちる:今はどうなっているんですか?

やまもと:スマホでみるとちゃんと改行できる場合と、改行しない場合があるんですよね。

いちる:本当ですか、担当者に言っときます。

やまもと:あと、クソなバナーがついてですね。エッチな漫画とかが、人がせっかく三木谷さんについて熱く語っているのに(笑)

いちる:三木谷さん、この漫画売っているのか。みたいな文脈に見えちゃう。

■「行頭1字空き」をやる理由

佐々木:せっかくなので、細部の話を聞きたかったんですけど、やまもとさんのブログって、必ず行頭1字空きをやられるじゃないですか。いちるさんの場合は、やっていないのが多いと思ったんですが、やっている記事も過去にあって、揺れていると思うんです。何かお考えとかポリシーがあるんですか。

いちる:本で読むと、1字下がっているとすごく読みやすいじゃないですか。ネットの場合、冒頭1字あけるというのが、行間をあけるの意味だと思うんです。行間あけていれば、冒頭1字あけていようがあけてまいが、読みやすさあまり変わらないなというのが、今日この時点での僕の感想です。来月変わるかもしれない。

佐々木:では揺れていたのは、試していたと。

いちる:何回もいろいろなことを試していますね。

佐々木:やまもとさんはどうですか?

やまもと:僕は単純にいつ本になってもいいように。

佐々木:原稿の流し込みをする時に楽なように?

やまもと:そうそう。

いちる:待ってるんだ!(笑)

やまもと:早く来ないかなと(笑)。でも、ウェブで書くというスタイルというものを考えた時に、1字下げるというが、本を読んでいる人たちに対してのアピールというのがあって、本を読んでいる人間が書いている文章ですよということで、ちょっと親近感を持ってもらおうみたいなものは思いますね。

それはYahoo!個人で書かせていただいている場合も必ず下げますし、あとメルマガでも下げますし、必ず下げるというのは自分の書き方のポリシーとして本を読んでいる人に親近感を持ってもらいたいのでという文脈で考えています。

佐々木:日経BPの場合、紙とウェブとで何かそういうポリシーというのが何かありますか?

竹内:ウェブでも最近は、1字下げしていますね。それは、紙の方もやっている出版社ですよという気持ちもちょっとはあると思いますね。

佐々木:最近ということは、一時期はポリシーが揺れていて?

竹内:ちょっと揺れていたというか、いろいろな編集部があって割と勝手にやっていたんですけど、最近は1字下げで統一していますかね。

やまもと:どっちがいいんですかね。佐々木さんどう思います?

佐々木:僕は、やまもとさんに共感するところがあります。空けない方がいいと思っていたんですけど、最近は同じ原稿をePubにしたりするので、紙と同じルールで入力しておいた方がいいと思うようになったので、行頭も1字あけますし、数字も1桁の場合は全角で書きますし、2桁になったら半角で書いたりしています。

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いちる:それ悩ましいですよね。1桁全角で、2桁以上半角で書くと、エンジニア界隈からすごい罵倒を受けるじゃないですか。こんなバカなことないって。

佐々木:「あいつアホだ」ってね(笑)。

いちる:でも絶対その方が読みやすいじゃないですか。

佐々木:両方いけるという意味では、うん。

いちる:すごい萎えますね。それ、どっちにしています?

やまもと:僕は徹底的に半角でやります。

いちる:1桁の時は、1文字半角スペースあけるとかします?

やまもと:いや、あけないですね。強調したい時はあけるかもしれないですけど、読みにくい時とか。ただ、紙で培った技法ってすごく合理的なんですよね。あの紙の中で、いかに1つの文章を読んでもらうかというのに徹底してノウハウが入っていて、ウェブになってもそれはあんまり色あせてないような気がするんです。

ですから、紙のやり方をきちんとウェブでも踏襲していった方が最終的に読みやすくなるし、自分で読み返した時に、「ああ、自分の文章だな」とわかるようになるし、僕はそっちの方がいいのかなと思っているんですけどね。

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いちる:じゃあ、次から数字の1桁は全角に。

やまもと:いや、しないですね。

■リンクの貼り方も表現の1つ

佐々木:あえて質問すると、紙のやり方、あるいは縦組みのやり方を踏襲した方が大筋ではよかろうという中でも、あえてウェブでだけやっているようなことはありますか?

やまもと:あえてウェブでだけやっていることは、リンクの貼り方かな。僕、必ずURL全部表示するようにしているんです。本当はテキストにリンクを入れてしまえば、早いし読みやすいんでしょうけど、文章の中にリンクが入っているというのは、僕はレファレンスが低いと思っています。

なので、必ず自分が何か引用する時はそのブログのタイトルと、URLそのものを書いて、URLのところにリンク貼るという形は徹底しています。

(例) やまもといちろうBLOG(ブログ)

佐々木:そういうことを考えている人がいるというのはイメージできませんでした。

いちる:いや、それ試行錯誤したことありますよ。URLにリンクを貼る。mixi日記とかそうだったじゃないですか。

佐々木:オートリンクされますよね。

いちる:いいな、URLリンクって思ったんですよね。

やまもと:やっぱりアクセスを流したくない先を取り上げるケースもあるわけですよ。そういう時は、魚拓を取って、魚拓のとこにリンクを貼るということをやったりとか。

そのリンクがなぜそこに置かれているかという意味を読み手にどう伝えるのかってものすごく重要なことだと思っていて、単純に「このURLの対象を論評していますよ」だけで終わっては本当はいけないと思っているんですよ。

なので、なぜリンク先が読売新聞なのか、というところを、そうは書かずとも読み解いてもらえるような仕組みを考えたほうがいいかなとは思っていますね。

いちる:僕も強調したいリンクは、タイトルを使うんですけど、それにリンクを貼って、さらっと流したいやつはリンクを文中に埋め込むというような使い分けを最近するかもしれないですね。

やまもと:最近、Yahoo!個人の方に書く時は文中にURLを貼るようにしてくださいというご要望があって、今試しているんですけど、やっぱりリンクを踏んでもらう確率が僕のブログと比べて半分以下、1/3くらいなんです。

佐々木:読んでいるうちに流されるというか、止まらないというか。

やまもと:そうですね。そのリファレンスを読んで、自分の論を読んでもらわないと意味が通じない話は確実にURLを別にやったり、わざわざ引用をそこにはめ込んだりして、ワンクッションおくようにしていますね。

■Yahoo!個人と自分のブログの書き分けは?

いちる:少し話がずれますけど、Yahoo!個人と、自分の個人ブログとどうかき分けているんですか?

やまもと:まず自分のブログは、あんまり今までと方針が変わっていなくて、Yahoo!の場合はより社会性の高いものとか、よりジェネラルな議題で自分が語りたい、論じたいものとか、あとは業界ネタに関しては定点観測しているものをYahoo!にあげるというすみ分けをしています。

Yahooさん側もよく考えていらして、うまく書き手が書きやすいようなフォーマットをちゃんと用意してくれているんですよ。たぶん、書き始めるとすぐわかると思うんですけど、やっぱり普通のブログと来ているお客さんの顔つきが違うのがすぐわかるんです。

それは要はBLOGOSと、Yahoo!個人と、いわゆる自分のオリジナルブログで来ている客層が変わるんだと思うんです。なので、客層向けに何を出していくのかというのは考えなきゃいけないのかなって思いますね。

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■デバイスによって文章は変わる

佐々木:ちなみに、2人ともいろんなプラットホームご経験あるので、私が聞いてみたいんですけども、いわゆる原稿用紙からワープロに変えて文体は変わるか?みたいな、古臭い議論があると思うのですが、各プラットホーム、たとえばココログの管理画面で書くものと、Yahoo!個人で書くものと、iPhoneでメモがてら書きながら、あとで送ってやるものと、というのはスタイルとか変わるものですか?

いちる:全然変わるでしょうね。最近、僕のブログはiPhoneメインで、さっき1週間であげた記事も全部iPhoneで書いたんですけど、より改行が増えるなという感じがあります。iPhoneだと、全画面で大体200字くらいなのかな。

でも、全画面文字で埋まるとちょっと重いので、ちょっとあけると、1段落80字ぐらいみたいな感じになる。でも、そうするとPCでみると割とスカスカに見える。でもスマホでみるとそのくらいがちょうどいい。書く時は書いている方のデバイスに合わせるみたいな。そういうのはありますね。

佐々木:やまもとさんはスマホで書くとかあるんですか?

やまもと:あまり一般では言わないことなんですけど、僕、実は携帯小説書いているんですよ。それでやっぱり、デバイスによって自分が同じように書いているつもりなんですけど、文章に与えるテイストって変わるので、これを逆に使って今僕は、作家のこれこれが書いているこれこれという小説をつくっているんだという風にやりながら書くようにしているので、そういう使い分けをするための道具にしていますね。

佐々木:文体は変わるものだから、書くものにあわせてわざと変えている?

やまもと:見えている範囲内で文章の長さって変わると思っていて、改行もそうなんですけど、まさにiPhoneは200字と仰っていましたが、ガラケーの古い機種で書くと、1文が相当短くなるんですよね。16文字とか、18文字で終わるような書き方になるんですよ。

あと、ショートメッセージとか使っていらっしゃる方が、普通のメールでの書き方と相当変わるケースがあると思うんですけど、あれに近いと思うんですよね。最近、Twitterが流行って、ブログと書き方が変わっている人がいたりとか、もしくはTwitterにハマちゃってブログ書かない人がいたりとかというのは、書きたいことがフォーマットの中で自分自身の表現の仕方だとか、そういうのが最適化されていっちゃうというのがある。

だから意識的に長いブログを書きましょうというのを自分には負荷として残しているところはあるんですよね。でもやっぱり更新頻度はだんだん減ってきてというのはあったりとかするので、考えなきゃいけないのかなみたいなのはあります。

佐々木:実はこれスライドまだ10%もいっていなくて、まだ3%くらいなので、そろそろいきましょうか。

いちる:飛ばすスライドもあります。

佐々木:飛ばすスライド、これはどうでしょう?

絶対に道玄坂に連れて行ってくれないタクシー:小鳥ピヨピヨ


いちる:これは、テキストサイト風の、テキストいじり僕の最盛期で…。

佐々木:最盛期、随分前じゃないですか(笑)

いちる:随分前。もうテキストいじりは、大体いいかなと思ったという記念碑的な記事ですね。

佐々木:次いきましょう。すごい数があるんです。これ、竹内さんがすごいエピソードを仕込んできたと聞いているんですけど。

竹内:タリーズでみた激モテな仕草。タリーズで、小さい声で「いただきます」って女の人が言ったという話ですよね。

いちる:そうです。

竹内:今日、僕見たんですよ、渋谷のタリーズで飲んでたら、目の前の人が手を合わせて小さい声で「いただきます」って、本当に言ったんですよ。

いちる:同一人物?

竹内:同一人物疑惑がありますよね。

やまもと:竹内さんって、そういう地味なところ気がつきますよね。

竹内:気づきますね。いや、タリーズ入ったらもう頭の中が、小鳥ぴよぴよになるんです。

やまもと:竹内さんはある種の昆虫的なというかなんというか、すごい感性していますよね。

竹内:偏ってますね。

やまもと:あれ、なんなんですかね、というと失礼ですけど。

竹内:僕は、書籍の編集がメインの仕事なので、書籍の編集者って日本にひょっとしたら何千人いるかもしれないですけど、全員専門分野が違わないと、ごはん食べていけないんです。なので、他の人が気がつかないようなものを見つけたいみたいなものはありますよね。

やまもと:すごいですよね。たまに関心するんですけど。それ気づくか?普通、みたいなのありますよね。

■短文、携帯小説の作法 

佐々木:先ほどの短文の話、短さで言うとこれ一番短いですよね。


いちる:全然覚えてないですよねこれ。

佐々木:そうですか。これかなり身の回りでも評判になったと覚えているんですが。

いちる:勘違いかもしれないですけど、確か走れメロスを140字で説明せよみたいなお題があったんです。#140bgk とか。それに応募したみたいな感じだと思いますね。

やまもと:bgkってなんですか?

いちる:140字で名作小説をかな。bgkなんですかね? ボケてじゃないな。@daichiさんがやっていたやつですね。


佐々木:これ自体に元ネタはあるんですか?

いちる:これは、まさに携帯小説で当時2ちゃんねるで、こういう携帯小説が揶揄されるのが流行っていたんですよ。そのテンプレートをそのまま当てはめただけですね。

佐々木:先ほど携帯小説の話が出たところだと思うのですが、お2人、考えられていることありますか? たとえば、いわゆる先ほどおっしゃられた揶揄されるというか…。

やまもと:それは基本的にターゲットに応じて、受け入れられる受け入れられないって必ずあって、女性の若い人たちにとにかく1場面を4文以内で構成するものをつくるというのが1つこれで言うところのお題なんですね。

それに合うような言葉を選びながら、かつ平易に文章としてのつながりかつ、携帯小説のチェックポイントというのがあるんですよ。ある意味、フィギアスケートみたいなもので、ここは三回転半みたいなものがあるんですよ。

たとえば、レイプがあったり、実は彼氏が重病とか、親族が死んだとか交通事故とか、必ずお約束があるんですよ。そのお約束の韻を必ず踏んで1つのショートプログラムが構成されているわけですよ。でも、これはものすごく仕組みとして完成されていて、それが踏まれていない小説はディスられるんですよ。

だから、彼氏の誕生日会→彼氏が来ない→号泣する→彼氏に電話する→着信拒否されている→彼氏の家に行く→他の女の子と寝てる、とか、そういうのが必ずあるんですよ。それを大体3パラグラフ、4パラグラフくらいで場面を全部変えていくというコツがあるんです。

そのコツを全部踏んでいくと、ちゃんと携帯小説になるんですよ。それも1万5000字か2万字くらいで、一回あたりが1500字くらいが15、13回くらいで完結するというテンプレがあるんです。

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佐々木:逆にそのテンプレの中で、差別化するポイントは?

やまもと:容姿とか、性的描写とか、もしくは感情の起伏とかに関しては、彼女たちが受け入れてくれる言葉をちゃんと順番に使っていくことなんです。かぶってもいいんです。普通の文化作品だと、表現かぶりって禁忌じゃないですか。

佐々木:そうですね。自然と避けますよね。

やまもと:でも携帯小説の場合、私泣いたとか、叫んだとか、心に風が通ったとか、クソみたいな表現を羅列していいんです。羅列するが故に彼女たちは、のめり込んでいくし、共感をするし、涙してじゃあ次の回も買って読もうとなってくれて、それが最後まで精読率を下げずにいくコツなんですね。

それと、たとえばジャンプの漫画とどう違うんですか?というところで言うと、最初と最後にちゃんと盛り上がりをつくってあげたりとか、ひきの場面に関しては、ちゃんとその人物の描写を4行くらいでつくってあげる。4行ですますのはどうかと思うんですけど。必ずお約束があるので、お約束さえわかっていれば基本的に書けるんです。

いちる:僕、軽くハーレークインロマンスの仕事をしたことがあります。ハーレークインロマンスもそうなんですよね。テンプレが決まっていて、冴えない私で金持ちの男性が好きって言ってくるけど、そんなはずないと思って私は逃げるけど、追っかけてくる。そこに意地の悪い女が来てっていうテンプレが決まっていて、このテンプレの中で相手役を王子にするか、IT社長にするかみたいな、そんな違いでしかないみたいな。

やまもと:ギミックは正直どうでもよくて、それこそありふれたものでも全然構わないんですよね。私の隣のオヤジでもなんでも構わないんですよ。
佐々木:これは最近ですね。

いちる:最近ですね。なんでこれ載っているのかというとなんだろう? 最近、僕iPhoneメインで記事を書いているんですけど、これはその場で起きた出来事を3分くらいで書いて、その後、僕片道40分くらい電車に乗っているので、合わせて60分とかそのくらい延々とこの短い文章を直しているんですね。

佐々木:これだけを?

いちる:そうです(笑)

佐々木:たとえばどこですか? 編集履歴が残っているとよかったですね。

いちる:初稿残しとけばよかったな。1文目は、確か最初は「僕が千代田線に乗ってきた時のことです」みたいな感じで書いていたと思います。こんな短い文章を延々と直すようなモノ好きがブログ書く人向けかなと思いますね。

佐々木:「今日、僕は遠足に行きました」みたいな、入り方を嫌ったということだと思うんですけど。

いちる:そういうのもあると思うんですけど、今回は文章に動きを出したかったみたいな。

佐々木:逆に、他の人のブログを見ていて、「これやっちゃダメなのにな」とか、「自分ならこんな風に直すのにな」とか。こんな短い文章を書くのでもやっちゃいがちだけどやらないほうがいいこと、みたいなのはあるんですか?

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いちる:まあ、1回書いたら、2回目はちょっと読み直して、文章10%減らすというのが、僕のルールなんですよね。

佐々木:最初の量から?

いちる:そうです。2回目に書くと要素どんどん増えていくじゃないですか。ここの背景説明しないとこの文章意味わからないしとか。増えていくんだけど、結果としては10%減らす。10%減るまで書き直し続けるという。

それをやっていない文章とか、まあほとんどやっていないんでしょうけど、たまにこの文書くどすぎるなと。これ10%減らしルールで書いたら、もっとすごく読みやすいのになみたいなのはありますよね。

逆に、その辺ほとんど意識していないかもしれないですけど、ものすごくうまいなというのは、最近ブログで出てきた「blog @narumi」というのがあるんですけど、「なるみん」という人がいて、その人はCNETとかで記者もやって、その後、NAVERまとめでカリスマまとめ人みたいな。

だからすごくちゃんとした文章と、テキストの集合体の断片でしかないものを両方経験していて、最近ブログ始めたんですけど、その2つがハイブリッドになって、ものすごい読みやすくて、くどくない。でも独特なすごい最新型のブログになってるなと。

やまもと:一言、ふたこと言いたそうな感じになってますけど。

竹内:面白いですよね。なるみブログ今すごく面白い。

佐々木:どこがいいんですかね。

竹内:何か、スススーと読めるけども、ちゃんと面白いし、写真とテキストのバランスもいいし。

いちる:数字を押さえるとか、記者っぽいところもあるんだけど、いわゆるブロガーっぽい投げやりな感じもあって。

竹内:説得力もあって、商品を紹介すると売れるという噂も。

いちる:次の記事のお題まで考えているじゃないですか。必ず最後に、次回はこれとかいって。

竹内:画期的ですよね。

いちる:もう一回来てくれるように工夫しているんですよね。このリストはブログに書いたやつですね。

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佐々木:この中でも、うまくいったとか、失敗したとかありますか。これ、相当長いリストなんですけど。

いちる:この「書かない」というのは3.11の後のほぼ休業状態のとき。

佐々木:文書技術の話なんですけど、書かないって…(笑)

いちる:これでPVが2割ぐらい下がって、まだ戻っていないみたいな感じがある。やっぱりブログって続けるの大事だなと思いました。

佐々木:中島敦みたいな話ですね。

いちる:そうですね。本当は「だ・である調」で書いてみたいんですけど、なかなかうまく成功していないんですね。

■やまもとさんの古風な文体は白樺派
 
佐々木:こういうのは何かこだわりありますか?

やまもと:「だ・である」で読まれる文章って短いことですよね。とにかく一文短く、歯切れよく、本人がそう思っていることを追いかけるように書くというような書き方だと、すごく映えるというか、ほかの「だ・である調」よりも読みやすくみえるという点で、すごく評価されやすいですよね。

いちる:あと、語尾に変化つけやすいですよね「だ・である調」の方が。「ですます調」だと割と、「です」「なのです」「ます。あとは体言止めみたいな。変化つけるのに、かなりテクニックいっちゃうなみたいな。

やまもと:否定をするときにアクセントがつくので、「ほかならない」とかって、「だ・である」のあとにつくと、そこでアクセントがついたりとかありますよね。

佐々木:やまもとさんは、否定のときに、割と古風な否定のバリエーションをお持ちですよね。

やまもと:反語好きですからね。

佐々木:あれはかなり意識してるんですか?

やまもと:あれはもともと白樺派の小説を読んでいるときに、これいいなと思って。

いちる:白樺派なんだ。

やまもと:もともとそっちの方向が好きだったので。

佐々木:なるほど、そういうことなんですね。

やまもと:「人間、理想主義的だよね」みたいなところから入って、「でも現実こうだからどうやって折り合おうか」みたいな、その葛藤で人が自殺したりとか、男女くっついてどこかに逃げちゃったみたいなのが大好きで。

いちる:やまもとさんのブログの記事が時々、妙に丁寧語になる時って照れがある時なんじゃないかなと思ったんだけど、そういうわけではない?

やまもと:あれはたぶん、丁寧に書いてないとヤバイ時ですよね。内容的に。相当丁寧に書きますよね。

いちる:そうですね。慇懃無礼に限りなく近いような感じになっていくという。

やまもと:これは本来ネットに書くべきじゃないだろうなというものに関しては、丁寧に書く傾向はありますよね。

佐々木:最後の方にあったんですけど、漢字をひらく、とじるの基準というのは何か記事によって工夫されたり、あるいはブログ全体でルールをお持ちでやられているんですか?

いちる:その時、読んでいる本に影響されるんです。

佐々木:じゃあ揺れまくって

いちる:揺れまくってますね。たとえば、村上春樹とか読んだあとは、かなりひらがな多くなったり、そういう感じですね。

やまもと:僕は絶対同じ。「わかった」なら、「分かった」にしますね。

■いちるさんの「えいっ」とやまもとさんの共通点

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いちる:これはまさにこうなんですけど、聞きたいことあります?

やまもと:えいっ」はどうなんですか?


小鳥メモメモ「えいっ」 


いちる:「えいっ」は、友達はみんな好きなんですよ。あれは僕、読み返していないですね。読み返したら恥ずかしくて死ぬと思うので。

やまもと:たぶんあの書き方が僕のブログの書き方なので。僕、基本的に推敲しない人なんです、基本的に。他の出す文章とか、お金いただく文章とか、どこかに載せる文章はもちろん推敲しますけど、自分のブログに関しては一切推敲しない、読み返さないんです。

佐々木:推敲しないんですか?

やまもと:1回書いて終わりです。

いちる:細かくギャグ入れるのもその場で入れてるんですか?

やまもと:その場で入れて終わりです。

佐々木:書こうと思った時に文章が頭の中にあって、あとはアウトプットの違いだけという感じですか?

やまもと:オチを決めて、構成だけ頭で考えて上から書いて終わりなんです。基本的に。なので、いちるさんが、「えいっ」を続けていくと私的な文章になっていくんですよ。

いちる:僕もあれ書いている時は、やまもとさんか、あるいは「24時間残念営業」とか、はてなっぽいなという印象はあったんですけど、すごい晒している感じがあるじゃないですか、あれを書くときって。下手さ加減とか、文章の意味で言うと、そういうのを全部ざっと書いて出しちゃうのはかなり勇気いりますよね。


--次回「切込隊長が、やまもといちろうになるまで」につづく

「切込隊長が、やまもといちろうになるまで」--ウェブ時代の文章読本より : Blog @narumi