あのビル・ゲイツも「今年読んでよかった本」を毎年リストアップしているんです。自らのサイトで「The Best Books I Read in 2013」と題して、なかなか渋い7冊を紹介しています。
彼が選ぶのはすべてノンフィクションですが、その理由は「世界がどのように機能するか、詳細を知りたい。そのためにはノンフィクションが適している」からだそうです。
さて、どんなセレクトなのか、ちょっと見てみましょう。
◆「コンテナ」が世界を変えたという話
原題は「THE BOX」。コンテナという箱を発明したことで世界の輸送が変わったという趣旨の渋い本。いきなりマニアックですが、なんと日経BP社さんが日本語訳版を出していました。
ビル・ゲイツ自身も「いきなり輸送用コンテナに関する本なんて挙げられても、そんなの読みたくないよね」と弱気な様子でご紹介。でもこのトピックは非常にユニークかつ興味深いものだそうです。コンテナ出荷への移行が世界経済に与えた影響は相当なものだ、と。
◆蒸気機関に関する発明の話
これも「THE BOX」に負けず劣らず渋いチョイス。しかも日本語訳版はなし。
タイトルにある「The Most Powerful Idea In the World」とは蒸気機関のことですが、ゲイツは家族とロンドンの博物館をぶらついて以来、片時も蒸気機関のことが頭から離れないそうです。
William Rosen
Random House
2010-06-01
人間の歴史を振り返って、あらゆる進歩をグラフに置き換えると、18世紀まではほぼ平坦なラインになるそうです。それを一気に垂直に立ち上げたのが産業革命。そしてそれを支えた蒸気機関こそ「世界で最も強力なアイデア」だと筆者のウィリアム・ローゼンは言っています。
ハードカバーにはなぜかCDが付属していますが、Kindle版はそんな面倒なものがつかない代わりにお値段3分の1。
◆人間が生物圏を変えてきた話
地上にたくさんの種はあれど、ホモサピエンスほど地球環境を変化させた生物はいないということで、人間がいかにして生物圏を改良してきたか、ありったけの写真とともに明らかにしている本です。
Vaclav Smil
The MIT Press
2012-12-21
筆者は大昔の狩猟から現代の農業、燃料まで、これまで人類が収穫した「あらゆる物質」(=バイオマス)を点検したそうです。その結果、そういった収穫なくして、人類の高度な発達はあり得なかったわけだけど、同時にその収穫が文明の根幹すら変容させつつあると言っています。
ゲイツをして、「Vaclav Smilほど新刊のデリバリーを楽しみにしている著者はいない」と言わしめたそうですが、この人は有名なんでしょうか。彼の書評も相当気合が入っていて、かなりリッチな作りになっています。Kindleなら紙の半額ですね。
◆日本でも有名なジャレド・ダイアモンドの歴史もの
この人は日本でも大人気。歴史の本で一番有名じゃないでしょうか。日本語訳版があって少しホッとしますね。今年の初めに出たわりと新しい本です。
人類の歴史はなんと600万年にもおよぶそうですが、国家やら文字やらが出現したのはわずか5400年前。狩猟採集から農耕への移行に至ってはわずか1万1000年前ということで、じゃあその前は何をやっていたんだ!?という本。なかなか面白そうですね。
でもジャレド・ダイアモンドの代表作はなんといっても「銃・病原菌・鉄」ですね。なので「昨日までの世界」についてはゲイツも「『銃・病原菌・鉄』ほど冴えてないけど…」と前置きしつつオススメしています。
◆アフリカの国々が統計能力を身につけた方法
経済学者のMorten Jervenが4年を費やして刊行した書籍。アフリカの経済開発における緊急の課題の1つに、統計能力の改善があるそうです。発展途上国の政府にとって、経済成長率や1人当たり所得などの信頼性の高い統計は不可欠。なぜなら、そうした正確な数字がないと、世界各国からの支援を取り付けられないからだそうです。
Morten Jerven
Cornell University Press
2013-02-01
じゃあアフリカの国々は一体どうやって直面する課題を乗り越え、GDP算出の手法を確立していったのか、というのを研究したのが本書ということです。
まあこれも日本語訳版はないわけですが、洋書の場合、ほぼ確実にKindle版があるのが嬉しいですね。
◆大学ってなんで学費が高いのか?
タイトルそのものであるこの問題は最近特に注目を集めていますね。ゲイツはお金持ちですが、実は大学の学費が高すぎる件について心を痛めています。
学位が価値を持ちすぎているんじゃないかとゲイツは感じているようです。「たくさんのお金を払った者が大卒労働者として企業に配属される。大卒者が供給過多になるまでの間は、学位の価格が下落することはないだろう」と。
ではどうやって大学の質を維持しながら、誰もが高等教育を受けられるような環境をつくることができるのか、本書はそれを探ります。そしてなによりKindle版はハードカバーより2000円も安いです。◆2人の学者が人類の未来についてディベート
筆者のSabinは、「世界は未曾有の環境危機に瀕しているのかどうか」という公式討論の内容を記録し、本書を発行しました。1980年、経済学者Julian Simonが生物学者のPaul Ehrlichに賭けを挑んだそうです。2人は人類の状況が「良くなる/悪くなる」に1000ドルを賭け議論。その様子が書いてあるので「THE BET」。
30年前の2人の極端な予想が、気候の変化など現在に続くさまざまな問題にどう結びついているのかを解き明かしているということです。
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以上、どれも、なんというかビル・ゲイツらしい意識の高いセレクトですね。そしておでんが美味しい季節ですね。
年末ですし久々に英語の本でも読んでみるかと全部ポチってみました。来年中には読み終わるでしょうか。
--次回予告

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